Slowly Slowly



アロマ仲間の平田圭世さんが、「薫風たいむ」というアロマセラピーと自然療法の情報誌を作っていて、私も記事を掲載させて頂きました。
挿絵なんかも手書きで、先日印刷にも行ってきたのですが、今どき貴重なアナログです。
私は、繋がりを大切にして、手渡ししているのですが、そこに掲載した記事を、本日ブログにて公開します♪





Slowly Slowly  〜トムが教えてくれたこと〜>


昨年4月、エサレンボディーワークの資格修得のために、バリに1か月滞在しました。
英語もほとんど話せない私が、一人でバリに行くなんて、どう見ても無謀な挑戦でしたが、バリの美しい自然の中で、陽の光と風を肌で感じながら、素晴らしい仲間と共に過ごした日々は、技術だけではなく、沢山のギフトを受け取りました。


中でも忘れられないことは、トムが教えてくれた「Slowly」=「ゆっくり」ということです。
トムは、背が高くてハンサム、厳しいけれど繊細で心優しいアメリカ人の先生です。
マッサージの練習のとき、私は何度も、「サチコ、動きが速い! もっとゆっくり!!」と注意を受けました。
もともとアロマテラピーには多少の自信があったのですが、せっかく新しい技術の習得に来たのだから、今までのやり方は忘れて、真っ白な状態で学ぼうと決心していたものの、あまりの動き方の違いに私はとても戸惑っていました。


アロマセラピートリートメントではさほど感じなかった身体が小さいというハンディや、物覚えの悪さも重なり、私は常に劣等感を感じていました。
不安で焦る気持ちが私の動きをますます速くさせます。マッサージはもちろんのこと、サロンの扱い方、ボトルの置き方、マッサージベッド廻りの動き方etc.・・・ことごとく注意を受け、私はトムが近づいてくるたび、緊張感で硬くなりました。
そんな私にトムは、「僕も昔は速かった。焦ることは何もない。ゆっくりと動いて、クライアントを感じることが大切だよ!」と、優しく言ってくれたのでした。


その言葉は私の心に届きました。


それ以来、ただゆっくり動くことだけに集中することにしました。
日常の歩く速度、食べる速度、行動全てにゆっくりを心がけました。練習以外の時間に出会うと、トムはそんな私を気遣い、「ハ〜イ!! サチコ ゲンキデスカ?!」と片言の日本語で声をかけてくれました。
私は、「Slowly〜 Slowly〜 」と笑いながら、そんなトムの前をスローモーションで歩くふりをし、いつしかトムに、「Slowly is OK!」と、指でOKサインを出してもらえるようになったのです。


当たり前のことだけど、ゆっくり動くと呼吸もゆったり深くなります。いつも上がっていると言われていた肩も、ふっと力が抜けて下がり、リラックス。
「今、ここにいる」ということに集中することができ、大地や宇宙、そしてクライアントとの繋がりも、しっかりと感じることができるようになりました。


バリでの1か月の大冒険を終え、身も心も解放されて帰国したとき、いつもの道を歩きながら、周りの景色が違って見えました。
と、同時に、しっかり地に足をつけて立てるようになっている自分に気がついたのです!!


あれから約1年。都会の喧騒の中で、自分の動きが速くなっていることに気づき、ハッとすることも。
そんな時、アロマの香りを胸一杯に吸い込みながら、「今、ここ」この瞬間に戻ります。


トムが教えてくれた「Slowly」は、私の大切な宝物になりました。