お正月の香り


新しい年を迎える準備をしながら、ふとなつかしい思い出が蘇ってきました。

私がまだ子供だった頃、お正月の朝のあの澄み渡った空気と、ピーンと張り詰めたような街の気配。
世の中のほとんどの活動が停止し、皆が休みに入っている元旦の朝の、あの静けさは独特なものがありました。
お店も全て閉店。往来の車の数も少なく、街の空気が澄んでいて、私はお正月の朝の景色が大好きで、いつも「お正月のにおいがする。」と思っていました。


お正月はお店が全て閉まるため、食材の確保とおせち作りに大忙しの年末。
あの頃はみんながとても忙しそうに、新しい年を迎える準備をしていたような気がします。
晦日は、普段何もしない父まで掃除の手伝いをしたり・・・本当はかえって邪魔だったけれど、本人はかなり得意げな様子で、雑巾片手に電気の傘なんかを拭いたりしていたっけ。(笑)
そして夜になると、一年にたった一度の大イベントである、父と一緒に囲む食卓の楽しさ。
毎年恒例のすき焼きを食べながら、紅白を観て・・・夜更かしも許されたワクワクした夜。
寝る前には枕元に、まっさらな下着や洋服も用意して、あの頃の私にはお正月は厳かで、身の引き締まるような特別な日でした。


多分私だけではなく、当時のみんなの意識がそうであったのではないかと思います。
お正月には会社の人や、親戚の人たちが年始の挨拶に大勢集まり、とても賑やかで、楽しかった日の記憶が今も鮮明に残っています。


でも今はお正月といっても、元旦からコンビニはもちろんのこと、スーパーもデパートもレストランもいつもと変わらず開いているし、それに伴い仕事の人も結構多く、お正月も昔ほど特別な日ではなくなりつつあるように思います。
みんなが食べないからと、おせちを作る家庭も少なくなり・・・
また、若者は年末のカウントダウンや、スノボーなんかで、31日から留守がちで、元旦に家族が揃わないことも多くなってきたのではないでしょうか。


時の流れとともに、あのお正月の香りはもうなくなってしまったような気がして、少し寂しくもあり・・・
でも私は、今まで受け継がれてきた古き良き時代の日本の風習を、もう少し守り続けたいと思っています。
父が亡くなり、昨年母は老人専用マンションに引っ越し、実家で集まることは出来なくなってしまったけれど、せめて元旦は、みんなで集まりたいと思うから。


カウントダウンに出かけた子供達も、毎年集合時間には間に合うように帰宅。
元旦はわが家で子供達、両方の母、私の妹一家の大集合で新年をお祝いすることにしています。
今年は息子が結婚し、また新しい家族が増えました。
こうして新しい家族が増えて行くのだなと思うと、楽しみで、私のやる気も倍増です。


今日は年神様をお迎えするために、頑張ってお掃除しました。
ガラス戸を磨き、カーテンを洗い、壁や天井の汚れ取りをしました。
明日は床を磨いてから、お花を活け、しめ飾りを飾りましょう!!
そして今日漬け込んだ黒豆を朝から煮て、おせち作りをぼつぼつ始めるつもりです。


お正月の街の香りはいつしか無くなってしまったけれど、お正月の我が家の香りを見つけていこうと思いました。
いつか私にも孫が出来た時、「おばあちゃんちのお正月の香り」という思い出として、孫たちの香りの記憶にしっかりと刻まれますように・・・